洗われた手
雨音がこわれていて
初夏の谷中墓地の桜並木のいちめんのこもれびの下を歩いていてもこわれていて
石にところどころ走った感傷に水がしみていたむ
うしろから犬の影が追い抜いてつづく自転車のよく反射する車輪を回しつづける台風は聞こえないままこわれていく彼方へあの服は捨ててくださいあなたにあげた青
空へと咆えながら
口をぱっくりあけてところどころ走っていった