原典:Pietro Metastasio. Melodrammi e canzonette. A cura di Gianfranca Lavezzi. Milano: BUR, 2005, pp.760-761.
訳者名:原口昇平(連絡先
最終更新日:2016年4月17日  ※引用の際 典拠、訳者名、URL、最終更新日を必ず明記


Pietro Metastasio (1698-1782)
da Rime, 1733.


 
Sogni, e favole io fingo; e pure in carte
mentre favole, e sogni orno, e disegno,
in lor, folle ch'io son, prendo tal parte,
che del mal che inventai piango, e mi sdegno.

Ma forse, allor che non m'inganna l'arte,		5
più saggio io sono? È l'agitato ingegno
forse allor più tranquillo? O forse parte
da più salda cagion l'amor, lo sdegno?

Ah che non sol quelle, ch'io canto, o scrivo,
favole son; ma quanto temo, o spero,			10
tutto e menzogna, e delirando io vivo!

Sogno della mia vita è il corso intero.
Deh tu, Signor, quando a destarmi arrivo,
fa ch'io trovi riposo in sen del Vero.
ピエトロ・メタスタージオ (1698-1782) 




夢と物語を私は紡ぎ出す。けれども紙に
物語と夢を描きつけていると
熱中のあまり、私もそのなかに入り込んで
自ら創り出した不幸に涙し、憤るのだ。

それにしても作品に欺かれていないときならば
私の気はずっと確かだとほんとうにいえるだろうか。はやる歌心は
もっと静まっているといえるだろうか。あるいはもっと
確かな動機から生まれるものなのだろうか、愛や憤りは。

ああ、私が歌い上げ、書きつけるあれらの
物語ばかりではなく、私が怖れるものや望むものまでもが、
すべていつわりなのだ。私は幻覚を見ながら生きている。

夢こそわが生涯のすべて。
おお、願わくば、主のみもとで目覚めるときが来たら
その暁には、〈真実〉に抱かれて安らぎを得たいものだ。  




訳者の注記
 韻律法の工夫に満ちた作品。形式としては 11 音節詩句を 14 行連ねているため伝統的なペトラルカ風ソネットであるかのように見えて、脚韻構造は ABBA ABBA CDE CDE などのペトラルカ以後の伝統で最もよく用いられてきた枠組みではなく、ABABABABCDCDCD というペトラルカ以前の(シチリア派まで遡る)交代韻のみによる枠組みを採用している。また興味深いことに、第 1 詩節の 4 行すべてで、第 3 音節にアクセントが落ちている。11 音節詩句の韻律定型で第 3 音節に韻律学的アクセントが落ちることはまずありえないのだが、それでも朗読の際にここに必ず文法的アクセントが落ちてしまうせいで、イタリア語の詩に親しんでいる読者は第 1 詩節を読みながらある種の矛盾というか居心地の悪さを感じずにはいられない。それが詩の進行とともに解消されていくので、第 11 行の言明が非常によく生きてくる。