窓と喪服
 

むすんで
ひらいて
五月の風が吹き込んできていた

かざした手に
渡されるものがあっても
花言葉を知らない
ここに咲くものはみんなそうだ
玄関に
ひとがたって
しばらくして
いなくなる

むすんで
むすんで
指先にはもう
なにもない
ほつれた糸について
かなしむことも
鯉のぼりを
見かけなくなったことも
向こう岸に咲いているものは
ここに似合わないのだから

ひらいて
ひらいて
みえないこどもが
青空に手をひかれている
こちらへうなづいている
ぼくはこのからだで
せいいっぱい
泳ぐことにした