「星」 尾上 れこ 行きがけになんとなく草をむしりながら歩いていると 向こうのチューリップ畑では誰かが花の部分だけを摘み取っていた よく晴れて黒々とした土のうえで小型のスプリンクラーがいくつか回り 細かい霧のようなものが少しだけこちらの道にも届いていた 夜帰ってくるときはバスに乗ったのでその後のことは何一つわからなかったが まだ五月だというのに真夏のように暑い日で 私は歩いているだけで大変に汗をかいた