独身機械の憂鬱   ななひと


   稀釈された身体は不透明に濁る。
   重なり合う空間をまたいで挿入された異物は
   視線に従って顕在化される違和を引きずりおろす。
   遅延することで拡散する存在としての私はそこでは臓物の空
   中庭園だ。
   異言語な世界を貫通する血流は身体を境界の向こう側へと先
   送りし、内燃機関を摸倣する私の内臓はつるし上げられた聖
   母の解剖図のように陳列される。
   時間は毀れ―ばらばらに撒き散らされ遺失物として郵送され
   た。
   私は細く節のある触手をどこにもない砂丘に下ろすだろう。
   唇から流れ落ちる蟻たちは解体された発語を送り続け―その
   とき月は生肉のようにずるりと滑り落ちる。