壜に満ちる






牛乳が置かれるのはいつも
眠りの前の
拭いた食卓なのだ
敷布は 日焼けた生成りに
ぽちりと青く 花のぬいとりをして

うつむけたおまえは
すり切れた裾をあわせ
手をにぎりあわせてだまる

おまえの労働の手足は
よく洗われてまっさらだ
食事の前には いっとき口を閉じて
食事の後には ていねいに茶をいれる
そうして すこしだけ息を吐いて
戸を閉じる
おおげさにはしないで

通りを行った子らは べたべたの手をして
菓子をねだっていたろう
おまえほどの靴はもたぬよ
おまえほどに土にちかく
こごめもしないのだ

さらして
語ることばもなかろうよ

食卓の上の空壜は
よく洗われてまっさらに
経たれて静かだ
眠りの前には
掃いた戸口に置かれる
うす白く ぽちりと青く
おおげさにはしないで



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