午睡 原口昇平 あとでは 彼女が靴を脱ぎつづけていた 断崖のうえで 屋上で 帰ってこないものを待つ玄関で 靴ばかりがおかれていた 手紙がなかった 信号待ちのとなりで 靴ばかりが立ち止まっていた 改札口を出ると 靴ばかりが待ち受けていた ただ白紙の原稿を取り出し そのうえで靴を脱ぎつづけるとか そんなことはなかった 彼女は服も脱がなかった 求められても しみで汚れたりしてもかまわずに 彼女はただ靴ばかりを脱ぎつづけていた