雨のための装置(車内用)   原口昇平


 
 kei-teki、堅苦しく鳴らして。ひざのうえ
に乗せたまま、青く抱き染めたばかりの一日。
そのぺたりとした展開図は、浅はかにも眠り
つづける列車のかたちにも似ていた。
 むしろ枕木からの、音群[es]の訪れ。それ
までには、季節のよく手入れされた爪にもま
た羽が生えてしまって。

 K的に、手の風景を飛びつらなる。

 さよなら、と。遮断機は無口なまま遠く。
しかしそれでも、ひろげられただけのものを
ひそやかにまねいた、山折りと
 谷折り。ひとよ。もうしばらくは冬の腕を
たたみ、かすれた窓の奥に [es]を抱えこん
だままで。