果実 原口昇平 遮断機の朝にたまった雨露を ひとときにむすんだ果実として * 思ったよりもしろいおんな まるまり 紫陽花のしおりが浮く肌に 書物はふせられ折り曲げられて 文字のすきまで髪洗うひと しなびた枝を連結してあそんだ 夕立の信号にまみれて 交接はよく見ると赤色 レエル、うすくたたまれ休む木陰 無邪気な舌 つつけばやり返すような 女ののどへと一葉を這う 振動をなんとなく気にして 冴え白む午睡の転轍機 いつのまにか喉がかわいてしまった おんなといずみに蛍 口づけ おぼれてしまう感触だよと したたりにむせる文字のゆくえを追う つかんではなさないこともないのに 交接するふたつの噴水 思ったよりもおんな まるまり 白さをましゆく書物の汗、たためず またこっそりと果実を口にふくんだ 衣を脱ぐへびのうねりに 書物はふせられ折り曲げられて 散りこぼれた雨露のあいまい