選ばれた花 −Kのない季節に 原口昇平 いつも 明日にあるひとだった しのばず 睡蓮のたちこぼれた そのままの姿で くらんでいくひとだった 手帳に遺された Kの字、まだ 余白のある/そのからだは ひとが埋めていった あなたには予定ができた むしろあなたが予定だった ゆらぐ音楽にはひとこともなくなる そこから伸びた、ぎこちなくも 懸命な くらがりの手 それが私の予定になった 処女紅 ふれること叶わず 奈落へ遠ざかる またの水面を (魚にはまぶたがないのだ) 見えなくなることさえ 叶わず 二月の石に 明日はいつまでも明日だった 静かすぎるぬくみからは 刻まれなかった しばられた日付と 菊は似合わない と