追いかける手



自転車をこいでかけあがっていくための急な傾斜だ

踏み込むペダルはいつになく重く地球の自転とつながっている説をリフレインしながらともだちから仲間はずれにされた子どもが

帰っていく坂のうえにひかりがあふれて

しまっていく喉の筋肉がきしむ背骨が初夏の夕方の屈折率でのけぞるこの観想は留まることを知らない声帯にあふれだす苦い息をとめられず声にならないああ、ああ

逃げてゆく記憶の後ろに乗っているのは

その名を呼ぶこともできない、ああ