幸福論
 
 
過ぎる
折り重なる何枚ものガラスを
過ぎていくたびに街の色は暮れて
ほほえみ
歩くひとの影を
ばらばらに歩く
 
離陸するまで手をひろげて
 
しずかに
ひろったはなしをする
あの日の誰もが分け持った
あなたは腿のほうを
あなたはのどのほうを
 
焼かれながら
もうすぐあつくなる
と つぶやいて
滅びない角度で
数えきるまえに飛び立った鳥の
影だけを
見た
ばらばらに
離陸するまで
離陸するまで手をひろげていた