一首は断たれたままだ どの文字にもやまい垂れが書き足され 作者の足跡は砂の日々に埋もれた 奪われた色の 痛みは展開図を持たない 青年の 持って引くと途中から抜けてしまう花束の 机の上の花瓶はまだ訃報に満たされている 伝えたひとも消失した 遠く 扉を開けて入ってくる くずかごに花を捨てようとしていたのだと云うと 外套につもった批評を払い落としもせずに 手をとって 帰っていく場所を探しはじめる