ひかれた手
無言ですれちがいかけたひとに
あなたは歌わない鉄棒のようにしなるやわらかく種を蒔くひとの振り返る
あなたは認めない手話のまたひらひらと逝く蝶がこぼれ落ちる夏にやがて復員するぼろぼろのひとびとよそれぞれにただ黙して農具をとれと
語りかけるように
あなたは語らないやぶれた土地に子音の鍬をたてた余白を掘り起こしたくろぐろと文字らしい畝をつくったにがい吃音の果実を一心に収穫しようとしたすっくと伸びる細いめずらかな声に
つかまったのだ と