電話のあとに


最後まで聞いていた

ちからなく
ほどかれた音楽を
暗闇のなかで
そっと閉じて

たくさんのひとが帰っていく
そのなかに
誰も帰らない部屋がある
その凍えが
耳の奥で痛みはじめる

手をひらいて
翳す
この指先の
終わりのない終わりは
地平線のようで
いつもその向こうから
朝日が昇るのだから

死なない
と
もつれた約束がまた
膝を折って
ぼくの隣に座りにくる
そっと肩を抱いて
一緒に
揺れている
外れたままの
電話の
あとに