LXI
見えるか まだ この空を分け持つ無数の手に 引き裂かれたあとの 緑の内戦が      
LXII
崩れ去るまえに 空港へ発とうとしている実行者のとなりで すくいだせるか おまえひとりの九月十日を      
LXIII
また立ち上がった 聞こえるか 白く洗われた砂嵐をつんざく 答えのない沈黙の影だ       
LXIV
海へ 悲しみへ おまえの映した便箋を ここから永遠に折り返す      
LXV
「名付けなかった  始まりのあるものには終わりがある  ただの一度も呼ばれないためだ」       
LXVI
「おそれたか  終わりのあるものには灰があり  その果てからまた運び出されるのだ」      
LXVII
ほら これがおまえのぶんの砂だ あとは知らない どこへでも運べばいい      
LXVIII
「わたしのからだをこなごなに分け持ってください  わたしのいない遠くへ運んでください」      
LXIX
靴底に入った砂を払うまた別の浜で すべての歌を忘れるまた別の日まで      
LXX
飛び立つまでは十字架