LI
窓を横切る灯の   尾の延ばされた告別のあとにまだ続いている 微風を この手に引き取れ       
LII
風の終わりの終わりに  線を引いては消し 両手をひらいて 立て また はためくまで      
LIII
沈めるな まだ 決して交差せず 絶え絶えの白夜をそのうえに転がしぬく 地平となれ      
LIV
ことばのうえで 跳ぶな 赤土に腰を下ろしたまま ついにひらけ 火口を      
LV
ここへ打ち寄せつづける いのちの穂先を 摘め 風向きが変わっても おまえの浜が失われても      
LVI
眠りこむたびに ほどかれてゆく水平線を 何度でも 結え ああその目が同じ海をひらくとしても      
LVII
空に夢見よ そしてふたたびまどろみのなかで ひらいても瞑っても姿なければ 瞬きのあいだに呼び 呼ばれよ      
LVIII
夢の森を消しこだまを消して 昨日をつなぎとめている杭を そっと抜き取れ おまえの起き出さないうちに 過ちが服を着替えないうちに      
LIX
帰れ 一度もおまえの母だったことのない いつもおまえを拒む 朝へと ひらいては最後におまえを奪う花蕊へと      
LX
あとではただすべて 話し終えた肩で 両手に引き取った砂を切り   (よみがえれ