典拠:Baudino, Mario. ‘Yehoshua: "E' stato un blitz stupido"’ Su 1 giugno 2010 di Stampa.
訳者名:原口昇平(連絡先
最終更新日:2010年6月3日
 
イスラエルの小説家イェホシュア、ガザ支援船に対するイスラエル軍の急襲攻撃を非難
  
  マリオ・バウディーノ記者
 
 愚かな行為だ、残忍を超えて愚かだ――A・B・イェホシュアは憤激に青ざめつつ半信半疑のままそう語った。このイスラエル人の大作家は、今回の痛ましい事件に関する情報をかき集めながら、信じられないという思いを抱いている。彼は、来たる6日にノヴェッロとランゲで予定されている文学祭ならびに7日にトリノで開催される読者の集いに出席するため、間もなくイスラエルを発ってイタリア・ピエモンテ州へ向かうことになっているが、その出発直前に、自宅にて、この事件のニュースを報道を通じて知った。彼の自宅はイスラエル北部に位置する海岸沿いの都市ハイファにあるが、彼は今回トルコの小船団を見かけていないばかりか、おそらくこれまでに一隻も見たことがなかったといい、さらには以前は街で大きな話題になってもいなかったようだという。ガザの復興支援船は現地の緊張を喚起したことはなかったのだ。それゆえに今回の事件は二重の意味で「奇襲攻撃」となった。
 
――あなたはこの事態を予期していましたか?
 
イェホシュア いいえ、まったく予期していませんでした。流血の惨事へ至るかも知れないなどとすら思っていませんでした。あの小船団を停止させ、検査して、本当に武器を持ち込んでいるかどうか確認するための方法は他にいくらでもありました。積み荷の種類からして、武器弾薬の持ち込みを目的とするものだと断定できるようなものでは絶対にありませんでした。あれではきっと拳銃にせよ小銃にせよ、手榴弾さえも、相当うまくやらなければ隠すことはできなかったでしょう。それにガザにそんなものがどれだけ持ち込まれようとも何も変わりはしないのです。
 
――それではどうしてあれほど攻撃的な介入が行われたのでしょうか。
 
イェホシュア 私にはわかりません。軍事的観点から厳しく見ても、ハリウッド映画のように〔少数の兵士から成る〕急襲部隊を投入する必要はいささかもありませんでした。そういう状況になればほぼ間違いなく戦闘になります、兵士は自分の身に危険を感じれば発砲しますからね。ほんとうに力ずくで制圧しようというのなら、兵士を多数投入して、圧倒的な力でもって乗り込むものです、そうしていたらきっと何も起こらなかったはずです。
 
――すると、何か起こるように計算されていた、という印象をあなたは持っておられるということですか?
 
イェホシュア いや、そうではありません。私の言いたかったことは、誰かが悪意をもっていたということではなくて、愚かだということです。解決法は無限にありました。たとえばトルコ大使に連絡して、積み荷の検査を要請するなどです。あるいは大使館職員でも十分です。そういうことも行われなかったのです。まったく判断力に欠けています。
 
――あのようなときにはふつうハマスでさえも何らかのかたちで話し合おうとするのではないでしょうか。
 
イェホシュア ハマスは運動体としては小さくて、そのうえ包囲されていますからね。だのに、イスラエルやエジプトのせいで、ガザはまるで北朝鮮のようなことになっているのです。
 
――そうしたことすべてに何か矛盾があると考えておられますか。
 
イェホシュア ことによるとアブ・マゼン〔=モハメド・アッバースの通称。かつて故・アラファトPLO議長の側近をつとめ、現在パレスチナ内部でハマスと対立しているファタハ穏健派の最有力者〕にとって都合がいいだろうとイスラエル当局は考えていたのではあるまいなと私は疑っていますが、しかしイスラエル当局側からのこうした「助力」をファタハに属するパレスチナ人たちが歓迎するなどとは私には思えません。それにハマスもまた和平をともに目指すパートナーであるはずです。
 
――判断を狂わせるような扇動的要素があったのでしょうか?
 
イェホシュア トルコの平和活動家たちがガザに連帯の意志を示そうとして、いまガザは金も資材も受け取っていますから完全な経済封鎖状態ではなくなっていますが、その結果エジプトとの断絶が深まってしまったということにはなるかもしれません、エジプトは国境で商品の流通を監視していますから。しかし、たとえそういったことが一種の扇動行為と見なされたとしても、当局はこういうやり方で対処すべきではありませんでした。何といっても、活動家たちは民間人です。イスラエルにとって脅威とはなりえません。どうして私たちイスラエルはびくびくと脅威におののく小国のようにふるまってきたのでしょうか、なぜ一隻の船を恐れるのか? 私の答えは単純です。何もかも誇張され過ぎてきていたのです。
 
――国際社会の反発について懸念なさっていますか? フランスの哲学者ベルナール=アンリ・レヴィは、イスラエル文化相との会合で、つい昨日次のようなことを述べました。いわく、国際社会に軍の奇襲というイメージを与えたことは、軍の敗北というイメージをもたらすことよりも、イスラエルにとってずっと悪い結果を招くだろう、ということでした。
 
イェホシュア 私にはよくわかりません。事件に関わったもろもろの要因を厳密に検証する必要があります。いずれにせよ、トルコとの関係の悪化はきわめて深刻です。トルコは、現在のイスラエル国家の誕生の時点から信頼のおける隣人でありつづけてきたのですから。
 
――トルコの政治方針はすでに変わっているでしょう。昨日の事件からではありません。
 
イェホシュア その通りです、イランに対して寛容になってきています。しかし私たちイスラエルは、とくにシリアと交渉するために、トルコと協調しなければなりません。トルコはイスラエルにとって重要なのです。