ぬすまれゆくせかい(童話3)
 
 
 
パン屋で働いてたペンギンくんから聞いたはなし


 みなしごの彼は ちいさいころ
 牛乳配達をしてお金をかせいでたんだって

 ある朝いつもみたいに
 うけとり箱にビンを入れようとしたら
 なぜだか

 そこには星空が広がっていて
 しばらくずっとながめていたんだって

 そこに突然 ドアが がちゃりと開いて
 家のご主人ブルドッグさんがやってきた!

 「こらあ 何してる
  いつもうちの牛乳をぬすんでいくのはお前か!」

 うけとり箱のなかは星空なのに
 だからビンは落ちていっただけなのに

 ブルドッグさんは気付かなくて
 ただ彼はだまってうつむいて泣いてたんだって


だからペンギンくんが焼くパンは
たまにオーブンから消えちゃうんだ

今日もまた店長に怒られてたから
なぐさめてあげようと思ってさ
帰り道ペンギンくんの家に寄ってみたんだけど

愛用のスケート靴しか残ってなくて
それさえも持っていけなかったのかな


彼はまだ片方の目から 星空を見続けていたみたいです。