決闘

白は母のまなざしに似て
くらやみのなかを満たしている
白は別れに添えられた宛名のない手紙
言葉を拒む
それこそが叫びであるかのように
みずからのいろどりのなかで凍えている
白は
あなたに雪を投げる子ども
白はある朝そっとめくられたカレンダーのあとに
いまだ記されていない無数の日付
その0日目の記念写真が
ネガのままで
どこか遠くの石段のうえに伏せられている
白には家族がいない
白は始まることがない
白は
あなたの眼球の
死ぬまで何も見ることのない部分のいろ
白は美しい黒炭のなかにある
白は決闘
そしていまもそこにある
八月の熱線に焼きつけられた
ひとりの
影